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クルリと踵を返し、奏の待つ車に向かう。こうするしかなかった。
「よしよし。いい子いい子」
頭をポンポンされる。私は終始俯いたままだった。
ずっとこうなのだ。私は奏の手のひらの上で転がされている。
大学だってそう。地元を離れたくて地方の大学に願書を送ったはずなのに、気づけは全てキャンセルされていて、滑り止めの地元の大学だけが残されていた。
奏がどういう意図で私と結婚したのかは分からない。好きとか嫌いとか、そんな次元で奏は考えていないと思う。どちらにせよ、奏の隣にいるだけであまたの災難が私に降りかかることだけは間違いない。
この立ち位置に甘んじるわけにはいかない。意地でも地元から離れた会社に就職してやる。
俯いたまま改めて心に誓う。私の人生、これ以上、好き勝手されてたまるか。
完
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