私の受難

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「桜を見に行かないか?」  奴のその申し出は実に唐突だった。唐突というか突然というか突発というか。 「何故、このタイミングで、このシチュエーションで、そんなこと言うの?」  2月上旬。実家の私の部屋。私は着替えの途中で辛うじて下着を身につけている状態だった。  奴はノックもせずいきなり部屋に入ってきた。幼馴染という間柄。家も隣同士で親も親友同士。小さい頃から家の行き来も当たり前で、大人になってもそれは変わらず、奴は度々無遠慮に何の躊躇いもなく、2階にある私の部屋を訪れる。
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