私の受難

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「――帰る!!」  車とは別方向に歩き出した。 「痛ぇなぁ。いいのか? 車乗って行かなくって」  背後から奏の声。 「電車に乗るからいい」 「いいけど、お前、お金持ってるのか?」  私の足が止まった。今日は全て奏に奢らせるために財布は置いてきたのだ。  熱海から実家までは歩けるような距離ではない。ヒッチハイク? ううん、ありえない。タクシーで帰れば実家でお金は払えるが、金額を考えるだけで恐ろしい。背に腹は――代えられない。
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