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「とりあえずこの部屋を解約して、一緒に住もう。そしたら、サトミも諦めるでしょ?」
んふふと笑いながらサトミへ言うと、サトミは頑なに身を縮め、眉間に皺を寄せて言った。
「嫌です。そんなことして、もし大富さんがいなくなったら耐えられないもん」
俺のこと、凄く好きだと言ってるのと同じだって、サトミは分かっているのかな?
「だからぁ~。先のことで悩むなんてバカだってば。それに」
俺はサトミをもう一度ギュッと抱きしめた。
「未来はふたりで作るもんだろ?」
サトミは俺の腕の中で「ふー」とため息を漏らした。そして渋々という様子で言った。
「わかりました。じゃあ、約束して下さい。俺が死ぬまで絶対死なない事。健康一番で入院とかしない事」
あんなに完璧に思い出の品を残さず、別れるのを前提に会社での対応も一貫していたサトミ。そんな先の見えない約束こそ、無謀なのは充分わかっているのだろうに。
別れの日を恐れるサトミは、本気で好きになってしまう前に別れるという道を今まで選択してきた。それなのに、サトミが提示した約束の中に、肝心な文言は入っていなかった。
そこに俺を信じたい気持ちを感じた。
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