なんとなく嫌なこと

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「あの、さっきの彼とは付き合ってるんだよね?」  店へ入ってビールで乾杯。最初は仕事や課長の話をしていたのに、結局俺は好奇心に負けてそう口走っていた。 「いえ、たまたま入った店でお隣だった人です」  一本調子で、他愛もない話の延長という感じに、ジョッキを傾けながら里見君が言った。あっけらかんとしている。 「へ……なにそれ……ど、どうして」  俺は呆気に取られ口をポカンと開けた。 「なんか、彼女に振られちゃったらしくて。すごく落ち込んでたから話を聞いてあげてたんです」 「で、どうして、ああなったの?」 「寂しい寂しいってあんまり言うもんだから。どうせ俺は……とか自暴自棄にもなってたし」  そんなの理由になんないだろう。  彼女に振られたってことは、そっち系じゃないってことだよね? なのに?  俺はマジマジと里見君を見た。  たしかに肌は女の子みたいにツルンとしてキレイだし、背もあんまり高くないから全体的なフォルムも可愛い。存在感で言えば、ほわほわしていて、和み系だけど……。  里見君は今風の派手なイケメンとは違う、和風な顔の造りをしている。  なんて言ったらいいのか、整っているだけじゃなく静かな味があるって言うの? 一番のポイントは目だと思う。  その水分の多いきゅるんとした眼差しが俺を見返してきた。
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