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里見君と電車に乗り、乗り換えして、最寄りの駅へ着いたのは十一時半頃だった。
コンビニで酒とツマミを買う。里見君は新しい下着をレジへ持っていった。それの意味するところなんて分からなかった。
アパートは徒歩で十分。
「遠くてごめんね」
俺の言葉に「ん?」と目をぱちくりして、ふるふると顔を横に振る。どことなく機嫌の良さそうな里見君。
アパートに着くと「お邪魔しまーす」と、大きなアクションではないけど、視線をキョロキョロ動かして部屋を見ている。
俺の部屋は1LDK。入って直ぐ八畳のキッチン。奥にリビング。リビングの横に寝室がある。キッチン側に風呂もトイレも独立してあるし、わりと広い造りなのに家賃が五万で済むのはやっぱりちょっと田舎だから。
「ラクにしてね。あ、ついでに風呂入る? 週末は風呂入ることにしてんだ。平日はめんどうでシャワーなんだけど」
「いいですね。じゃあ、せっかくなんでいただきます」
ニコッと笑顔で同意してくれた里見君へ言った。
「実はアパートの裏に銭湯があんの。ふふふ。着替え貸してあげるから行こうよ」
そう。なんで十二時までにアパートへ戻りたかったかと言うと、銭湯が深夜一時までだから。平日は十時までなんだけど、金曜、土曜は一時まで開いてるんだよね。凄く助かる。
「銭湯?」
里見君は笑顔からきょとん顔になった。
「うんうん。大きな湯船に浸かるの気持ちいいぞ~。ほら、スウェット貸してやっから、タオルも。これに着替えて行こう行こう」
「はぁ……銭湯……」
再確認するかのように、呟いてる。浮かない表情にも見える。
「銭湯やだ?」
「嫌じゃないですけど、予想外の展開だったので」
「あはは。人生、予想外の方が楽しいだろ?」
寝室のクローゼットからハンガーと着替えを出して里見君に渡し、いつも着ているTシャツとジャージに着替え、シャンプーセットとボディソープ、タオルを持ってふたりで部屋を出た。
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