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里見君とふたり、いい気分でアパートへ戻る。
冷蔵庫からビールを取り出し、冬はコタツにしているテーブルへツマミを広げた。俺がテレビを正面に座ると、里見君は俺の右隣へ座った。
「かんぱ~い」
「かんぱい」
ゴクゴクとビールを飲みながら、音がなにもないのもアレだなと思い、正面のテレビを点け、いつも観るお笑い芸人たちのトーク番組にする。途端に流れてくる賑やかな笑い声にホッとした。
「……あはは、俺、この番組好きなんだよねぇ~」
なんとなく間がもたなくてどうでもいい事を口にする。
「僕も観てます。面白いですよね」
「お? ほんとにか?」
思わぬ同意を得て、気が楽になった。嬉しくなってテレビ画面から里見君へ視線を向ける。里見君は穏やかな眼差しでテレビを見ていた。
こんな時になんだけど、とてもきれいな横顔をしている。顔の造りだけじゃなくて、ゆったりした表情もいい。
彼女に振られた男がつい、里見君に甘えたくなる気持ちは理解できないこともない。とぼんやり思った。
「結構気が合いますね」
「うんうん。良かった良かった」
テレビを観ていた里見君がマバタキをしたと思ったらその目で俺を見た。
フッと微笑まれ、自分が里見君の顔に見蕩れているのに気がついた。
やばい。口が開いてたかもしれない。
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