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「大富さんていい人ですよね」
「え? へ? そ、そうかな」
突然褒められて焦る。
「あんなの見たのに家に呼んだり、銭湯連れてったり。警戒とか毛嫌いとかしないんですね」
警戒? 毛嫌い?
どの言葉も里見君からは程遠かった。
「……するわけないし」
なんで「するわけない」のか自分でも良くわからない。でも里見君はいい子だと思うから、フラフラするのは嫌だなと思うだけで。
持っていたビール缶をコタツに置き、里見君がコタツに両腕を乗せコタツにもたれかかった。と思ったら、体ごとこちらを向いた。完全にテレビから背を向けた姿勢になる。
「さ……」
「キスしません?」
「……え……」
俺はポカンと口を開けて里見君を見た。
里見君の背後でドッと笑い声が聴こえる。
画面は里見君で遮られどんどん見えなくなる。目の前がすっかり暗くなって……
口に柔かな唇が押し付けられたのを感じた。
これって……
真っ白になった頭。完全に止まる思考。
離れる唇。だんだん視界が明るくなる。
「嫌がらないんですね」
「……気持ちよかった……」
何を言ってんだ俺は。と思いながら里見君へ視線を合わせようとするのだけど、どうにもこうにも照れくさくて目が合わせられない。
本当は一大事だし、もっと大騒ぎしていいはずなのに。
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