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洗い物をしているサトミ。
作るのは俺。
現在、八月。サトミとこうなって一ヶ月が経った。
サトミが毎週末を俺のアパートで過ごすようになり、このスタイルは自然と形成していった。
サトミは食べる事にあまり興味がない。だから出されなければ、よほど空腹じゃないかぎり自分から食べようとしないし、食べたとしても食べるために何かを作る事はしない。その場で食べられるものを適当に口に入れるだけ。ポテチとかバナナとか。
必然的に俺は作る方に回って、サトミはお礼に片付け。……をしてくれてるのかと思っていたけど、実のところそうではなくて、サトミは洗い物が家事の中で一番好きみたいだ。
鼻歌を歌いながら皿を洗い、台所を片付けて戻ってくる。
ソファに座っている俺の横にぼすんと座ると、コツンとサトミの頭が肩に乗る。俺はその頭に頭を乗せた。
「お疲れ様~」
「うーん」
唸ってるのではない。これはサトミの気の抜けた返事。
「ん」
顎を持ち上げて一音。別に目を瞑ってるわけじゃない。
俺はくっつけていた頭をずらしてサトミへ向けると、その口にチュッとキスする。
もたれている方の右腕を持ち上げ、サトミの顎をくすぐりながらもっと上へ向かせた。
「サトミ……可愛いね」
最後の「ね」を言い終える前に、サトミから唇をくっつけてきた。はむはむと軽く挟み少し離すと「ふふふ」と嬉しそうに小さく笑う。おでことおでこをくっつけて、俺も「ふふ」と笑った。
サトミの白くて柔らかい肌が好きだ。気持ちよくていつまでも撫でていたくなる。ほっぺをフニフニと指で触りながら、軽く開いた唇にまたキスをする。チュッ、チュッと口をくっつけて離して、サトミの可愛い顔を眺めて、またキスする。
何をするでもないこの時間が凄く幸せだと感じる。
そう思っているのに、サトミはキスしながら手を伸ばしテーブルに置いてあるリモコンを手探りで掴むとピッとテレビを点けた。
「んも。テレビ観ないくせに」
俺はサトミからリモコンを取ると、またピッとテレビを消す。サトミが俺の首に手をかけ更にキスを繰り返しながら、またテレビを点けた。
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