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当たり前のように俺の横にサトミはいた。
そしていなくなった。
未だ俺の部屋にはぽっかり空いた空間がある。心の中にも。
会社でのサトミは、付き合う前も、付き合ってる時も、別れた後だって何も変わらなかった。
俺を不自然に避けることもないし、逆に馴れ馴れしい態度もない。それが常で、こちらが感心するくらい一貫していた。
同じ会社に勤める一社員、他のみんなと何一つ変わらない。
どんな意味であっても、特別はもうどこにもない。
まるであの三ヶ月が嘘みたいだ。最初から何もなかったみたいに。
それにホッとしつつ、寂しさを感じていた。
恋愛沙汰でゴチャゴチャするのは苦手。だからサトミの態度は有難いことなのに。矛盾してるなって思った。
「雪だ」
会社帰り、いつもの駅を降りてひらりと舞う白いものに顔を上げた。
小さな小さな綿埃みたいな雪がフワフワ空を漂ってる。本格的に降ってるわけじゃない。風にのってどこからか運ばれてきたみたい。
俺は駅へ足を向けた。
今降りたばかりの駅へ入り、滑り込んできた電車に乗る。
今日中に着けるかどうかなんて分からない。着けた所で帰ってこれるかな? でもまぁ、いいや。なんとかなるだろう。
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