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俺はサトミの隣人にヘコヘコ頭を下げ、階段を登った。奥から二番目のドアへたどり着き、インターホンを押す。
ドアが開くと、眉を寄せ、不機嫌そうに口をムッと尖らせたサトミが顔を出した。
久しぶりに近くで見るサトミに嬉しくなる。
「おはよお~」
「こんなことする人だと思わなかった」
拗ね顔で俯きながらぶちぶち文句を言うサトミ。
「あははは。ごめん。これお土産」
四角い箱が二つ入った紙袋を渡す。サトミはそれをジッと見つめ、受け取らないままドアノブから手を離し体の向きを変え部屋の中に戻っていってしまう。
締め出されないってことは上がってもいいのかなと判断して「おじゃましまぁす」と部屋へ上がった。
サトミの部屋1Kだった。
玄関を上がればすぐ目の前に小さなキッチン。一口コンロと正方形の流し台だけ。使ってないのか物もなければ汚れてもいない。玄関に背を向け料理する配置だ。キッチンスペース側に何もないからやたら玄関が広く見える。玄関から見て左側にドアが二つあるけど、これはきっとトイレと風呂なんだろう。そしてキッチンの奥に六畳ほどの部屋。以上だ。
奥にさっさと歩いていってしまったサトミを追いかけ、もう一度小さな声で言う。
「おじゃましまぁす……」
第一印象は殺風景。家具が圧倒的に少ない。
ベッドと小さな机。その前にテレビ。机の下には小さなラグが引いてあって、ソファの代わりにビーズクッション。後はゴミ箱だけだった。細々した物も最小限。食器棚にも食器は一人分。
なんていうか……。
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