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里見信也が入社してきたのは八ヶ月前の四月だった。
俺はお世話係でもないし、ただなんとなく可愛い感じの子が入ってきたなぁ。ぐらいの認識だった。
誰に対しても笑顔で、仕事もそつなくこなしているようだったし、今時の子によくある急に欠勤とか、辞めちゃう。なんて事もなく三ヶ月が過ぎて、今度入ってきた里見君は大丈夫そうだね。
なんて思ってた。
そんなある日の事、取引先から戻ってくると、里見君が課長の席の前で激しい叱責を受けているのに遭遇した。その課長は癇癪持ちで、訳のわからない所で急に沸点に達する厄介な人間だった。俺たちは何度も地雷を踏んで、その癇癪とぶつからないように逃げる術を取得したけど、里見君には多分、初めての事だった。項垂れて、ジッと課長の言葉を聞いている。
あちゃ~、可哀想に。
事情は分からないけど、どうせ大したことない事で大騒ぎしてるんだろう。そう思いつつ、叱責される里見君を横目で見ながら席に座った。隣りの席のやつに「アレは?」と小声で尋ねる。同僚の話しによるとやはり里見君には落ち度はないらしい。
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