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 大きな岩の上にリーナと一緒に立ったフュンフは友軍である異国の兵士たちを不思議な気持ちで見下ろしていた。 「作戦はこうだ」 フュンフの言葉は翻訳をされて兵士たちに伝わる。だからできるだけ簡単な言葉でゆっくりと、間を考えながら話さないといけない。 「まずここで一戦して敵が怯んだら、後ろにいる味方を通り越して次の線に貼り付く。味方が下がって来たら敵と戦う、その繰り返しだ」 フュンフは港町出身の男たちを自称海賊だったという男に任せ、残りの者を率いて敵に最も近い台上に進出した。  勇猛ではあるが話が直接伝わらない元戦闘奴隷を連れて来たのは、出自にこだわってフュンフを見下したりしないので少なくとも「話の通じる」友軍よりは指揮通りに動くことが期待できるからである。半数以下の戦力で奮闘するのを見れば後方に陣を準備する友軍は我々より勇敢に戦おうとするだろうという期待もある。 「例え敵が千名で攻めて来ても、真っ正面から我々が百名で守るこの地点を抜くことはできない」 なんのことはない、この道路が上がっている台は敵に向かって左が川、右が深い森になっており、正面に展開できる幅が百歩にも満たない戦いやすい場所だからだ。 ただし、森の中を通って後ろに回り込むことは出来るので真面目に戦う陣地には向かない。 「この台上から弓の射程ギリギリのところに石を積み、木を立てかけろ」 一番恐ろしいのは騎兵の突進であるから、速度を殺すことが出来れば重装歩兵を相手にするのと変わらない。下馬させることができればもっといい。 「大将、後ろの陣地から狼煙が上がりましたぜ」 フュンフはなぜか通訳達から「大将」と呼ばれている。彼の国での指揮官の呼び方であろうか 「よし、武器を取れ、皆隠れろ」 港町から館に向かう隊商がこちらに向かっている合図である。  フュンフたちは森に分け入って、道路に向かって突進しやすい場所を選んで身を潜めた。 皆フュンフの顔を見ている。 「いいか、派手にやるぞ。荷は道路に積み上げろ」 フュンフは自信が満ち溢れているような態度で指示をした。 台上にはリーナが隊商の注意を向けるため、道路の向こう側である川側に立っている。 「もう一度武器を点検しろ、戦闘用意!」
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