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「フュンフ率いる別働隊は、本日昼には敵の後方連絡線を遮断するであろう。それに対し、敵は遅くとも本日夕には後方打通のための兵を館から進発させる筈である。敵の兵が出たならば臼砲は攻撃準備射撃を開始、敵の混乱に乗じて歩兵は道路を直接制している館の西側の台の突角陣地を奪取せよ」 「御意」 「弓兵は火矢を館内に射ち込め、弩は歩兵を直接支援せよ」 「はっ」 「台を奪取したならば、騎兵は館にかまわず道路を突進、我が別働隊と戦闘中の敵を背後から襲撃、殲滅せよ」 「わかりました」 「騎兵が戻ったなら館を取り囲んだ形で休戦、降伏を勧告。質問は?」 「臼砲発射について細部お願いします」 「そうね…、臼砲隊は西の台の後方にある山に斥候を上げなさい。別働隊を攻撃するために少なくとも100名は出るでしょうから、出切ったところを見計らって砲側に合図。砲側は合図を受けたなら各砲10発最大の速度で撃ちなさい。これでいい?」 「狙う場所については」 「初弾は前面の石垣、次弾以降は奥に奥に、最終弾は建物を狙いなさい。砲弾の下を兵が進むから、決して弾着を手前に戻さないこと」 「はっ」 「ついでに言うと、しっかりした城壁があるわけではないので攻撃そのものは容易でしょう。しかし各隊騎兵が戻るまでは敵の減殺に徹し、前面に敵を引きつけておきなさい。無論防御に穴が開くか、もしくは崩壊するほどに弱体化したのなら突入を可とします」 歩兵隊、弓兵隊及び騎兵隊の指揮官は互いに顔を見て無言で頷いている。 今回編成された臼砲隊の指揮官は貴族だが実戦経験がないので構想を示して細部は任せるというエリカのやり方に戸惑いを隠せないでいるようだ。  作戦会議を解散させると、各指揮官は騎兵の準備した馬を使ってそれぞれの持ち場に戻って行った。各部隊へは騎兵隊から予備馬と当番を差し出しているらしい。
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