溺愛の獣

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「綾波さんっ?何してるの――!」  美名が救急箱を落とした。  綾波が両手で亮介と三広の胸ぐらをそれぞれ掴んでいる。 「綾ちゃ……ん?」  ふたりが青ざめているのに気がつき、綾波は我にかえり手を離す。  美名が不審な目で見つめていた。  綾波の全身が脈を打って熱くなっている。  (一体どうなってるんだこれは……)  深呼吸して落ち着こうとした時、亮介が手を叩いてとぼけた声を出した。 「あ――!三広、そういや野村と曲作りの打ち合わせの約束だったな!」 「えっ?」 「今度は、美名ちゃんのデビューが決まったら改めてお祝いしようね?じゃあ、綾ちゃんまたね!」  キョトンとする三広の尻をバシバシ叩き、玄関に追い立てる様にしながら明るく言ってドアを閉めた。
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