奪われた歌姫

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 綾波は唇を離すと、真っ直ぐな髪を揺らしながら益々激しく打ち付ける。 「くっ……堪らん……っ」 「ああっ……だ、ダメっもうダメっ」 「まだだ……もっとだ」  綾波は美名の右脚をぐっと倒して、更に深く突き刺した。  最奥まで猛りが当り、正気に戻れないほどの快感に狂う。 「……歯を食いしばれ……もっと激しくしてやる」 「あ、あああああ――っ」  大きな動きで猛りを激しく出し入れされて、狂った叫びを上げて綾波の背中に爪を立てた。 「もう、もう本当に……ああっ……ダメっ――」  美名が叫ぶと同時に、綾波は彼女の肩に顔を埋め、溜め息と同時に爆ぜた。  甘い快感の余韻に刹那酔っていると、やっと聞き取れる程の微かな囁きが、美名の耳元で聞こえた。 「……ほなみ……」  ――私では無い名前……  熱をもて余す身体とは裏腹に、美名の心は急速に冷えて行った。
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