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自分の名前を、土の奥深くに埋めてしまいたいと思ったことのある人、手を挙げて。
改名したいと思った人、手を挙げて。
あたし、ツキノツキコは、代表としてこの手を挙げても構わない。
『ツキノツキコ』なんて名前じゃなかったら、もう少し真っ直ぐな人生歩けていたと思うの。
地面ばかり見て歩いていなかったと思うの。
学校の休み時間なんかは机に張り付いていないで、元気に校庭を走り回っていただろうから、きっと運動神経も抜群だったと思うの。
好きになった男の子にだって、勇気を出して告白したりして。
バレンタインデーだったり、文化祭だったり、卒業式だったり、そんな行事ごとに訪れる告白のチャンスをみすみす逃したりはしなかったと思うの。
こんなことをグチグチ言うと、『たかが名前なんかで人生損したなんていうんじゃねえ』って聞こえてきそうだけど。
実際、そのセリフをズバリ言ってのけた男がいる。
見事に容赦なくぶった切ってくれたその朝陽という男が、結果このこじらせ女子の救世主となった。
二十二年間彼氏なし、恋愛経験なし、そんなあたしの狭かった世界を魔法のように一気に広げてくれたんだ。
「あんたの心掛け次第でしょ。同じ景色を見ても感じる色はそれぞれ。ここで変わってくる」
朝陽は自分の胸に拳を二度突きつけ、そう言った。
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