桜と少女と教室と

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◇ 物心ついた頃から、僕には“おかしなモノ”が見えている。 それは先日亡くなった近所の駄菓子屋のおばあちゃんであったり、橋の上から川を見下ろすずぶ濡れのサラリーマンであったり、誰も住んでいない筈の家の二階から顔を覗かせる男の子であったり…… つまりは世間一般で言うところの“幽霊”だ。 僕は彼らと話した。 時には向こうから話し掛けてくることもあるから、それに応えることもした。 そして彼らを見付けたり、話したりしては色んな人に報告した。 両親に、先生に、クラスメートに、友達に。 ……幽霊を見ることができるのが自分一人なのだとは知らずに。 そう、知らなかったのだ、その頃は、まだ。 自分が見ているものが“おかしなモノ”なのだとは、まだ。 ──小学五年生になった頃、気付けば友達は僕に近寄らなくなっていた。 クラスメートも僕を避けるようになった。 先生には「人をからかうな!」と怒られた。 両親には病院に連れて行かれた。 そんなことがあった11歳の冬、ようやく気付く。 自分の見ているものが“おかしなモノ”で、そしてそんなものが見えてしまう自分が“おかしい”のだと。 だから決めた。 もう二度と“おかしなモノ”には関わらない、“おかしなモノ”のことを他人に話したりしない、と。
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