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その決意が崩されたのは、高校一年生の夏休みだった。
「一年二組、肝試し大会!開催しまーす!」
クラスの中心人物である高山俊也の掛け声にクラスメイトから歓声が上がる。
時刻は十九時三十分。
僕達──一年二組の生徒四十名は旧校舎の前に集まっていた。
クラスの親睦を深めようとのことで高山が主催したこの“肝試し大会”だが、内心、僕は非常にげんなりしている。
何も見えない人達はドキドキワクワク、きっと楽しいイベントになるだろう。
しかし僕にとっては“いかにおかしなモノ達を無視し、適度に怖がる演技を続けられるか”という、ある意味劇舞台のような苦行にしかならない。
正直今すぐにでも帰ってしまいたいところではあるけれど、活気溢れる空気を壊すわけにもいかず、萎えた心に鞭を打ち、他と同じように声を挙げた。
「ではでは、早速ペアを作りまーす……と、言いたいところなんだが、その前に」
こほん、とワザとらしい咳払い一つ。
高山は神妙な顔つきになって言葉を続けた。
「この旧校舎が使われなくなった理由って知ってるか?」
「木造で危ないからでしょ?地震で壊れそうだとか、あと冬は寒いからって先生が言ってたよ」
「ちっちっち。それは建前。本当の理由は違うんだな」
高山の言葉に周囲がざわつく。
その続きは何となく読めるけど。
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