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「実は十九年前、ここで生徒が自殺したんだとさ。何でも失恋のショックで首筋を切ったとか。血がぶしゃーっと出て、その痕が床や天井に付いたまま消えない」
迫真の声色だった。
あまりの演技力に何人かは肩を寄せあったり、或いは既にドン引きしている。
「その事件があってから可笑しなことが色々起きるようになった。教室のドアが勝手に閉まったり、誰もいないはずの場所から足音が聞こえたり、理科室の人体模型が声を上げて笑ったり、蛇口から赤い水が出るようになったり……!」
「いやー!もう聞きたくないー!」
「とまぁ色々噂があるんで新しい校舎を作ったらしいぞ。じゃ、本題のペア作りしようか」
皆が一様に怯え始めたことに満足したのか、高山は頷きながら用意していたクジを差し出した。
男女別に箱へと流し入れ、順番に引くよう促す。
同じ番号を引いた者同士がペアとなり、校舎内に設置してあるチェックポイント三ヶ所からお札(高山のお手製)を回収してくるのが今回の目的であるらしい。
クジを引いた順に、次々とペアができていく。
思春期らしく恥ずかしそうにしている者達。
「なんでお前なんかと!」と反発し合っている者達。
それを見て満足げにニヤニヤ笑っている高山。
クラスの親睦を深める──というよりは“男女の”親睦を深めるのが狙いであるのは明白だ。
クラスメイトの反応を眺めている内に、いよいよ僕の番が回ってきた。
内心辟易しながらも、さも楽しみであるかのように振る舞い、クジを引く。
果たして僕のペアの相手はと言うと──……
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