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「あの行商人か? あんな奴、親父に言って村に来れなくしてやる! おまえは村の恩を忘れたのか?! やがて俺が家を継ぐんだ、だから俺に恩返しろ!」と、由は琴を責め立てた。  どうしても己のものにならない琴への苛立ちと、行商人の若者への嫉妬に、由は抵抗する琴を引きずってゆき、居間に押し倒すと犯した。  琴が孕めば親も許してくれる。子を産めば琴もきっと俺に情が移るだろう。何より子供の父親は俺なのだから。そんな浅はかな(はかりごと)のために蹂躙された。琴は破瓜の痛みで涙が止まらなかった。  事を終え、欲望の全てを琴に注ぎ込んだ由は、汗だくで大の字に寝転んだ。 その目には何時もの煤けた天井が見えた。
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