チョコレートには妖精が……。

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 ※  目を覚まして時計を見ると、既に午後三時を過ぎていた。  どおりで腹が空いたはずだ、昼飯も食べずに寝ていたんだからな。体温を測ってみると、三十六度八分。かなり下がったけど、お陰で関節が痛い。  のろのろと起き出し、普段着に着替えてリビングに降りた。冷蔵庫からスポーツドリンクを出し、ボトルに口を付けて飲み干す。テーブルの上には、オニギリと並んで俺の好きなパイナップル缶が置いてあった。 「ちぇっ、せめて器に入れとけよな」  文句を言っては見たが、少し嬉しい。缶切り不要の蓋を開けて食器棚に手を伸ばすと、ガラス器の反射光に何かを思い出しかけた。 「……何だっけ?」  手を止めて考えてみる。しかし、解らなかった。  諦めて器を取り出し、テーブルに置く。 「やっぱ、デザートは後かな」  オニギリを一つ頬張り、スポーツドリンクで腹に流し込んだ時に玄関チャイムが鳴った。 「ふぁ~い」  口の中のご飯粒を、急いで飲み込む。多分宅配便だろう、ハンコは確か下駄箱の上だったな。  しかしドアを開けた俺は、目の前の人物に狼狽えた。 「あのっ……こんにちは」  そこにいたのは、木ノ原瞳子だった。  消え入りそうな声の挨拶に、俺も慌てて言葉を探す。 「えっと、どうも……なんか、用?」  取り繕った言葉が不機嫌そうに聞こえたのか、木ノ原はちょっと泣きそうな顔になった。  しまった、そんなつもりじゃなかったんだけど……。
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