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「はい。先日、私が中継に来た時は、地上に展開する豪攻車の対空砲火により、各局の報道ヘリが撃墜されていましたから……」
「それにしても……動きが少し慌ただしく見える」
何に気付いたのか──零治はモニターを直接指差して、不審に思った場所をあいちゃんに示した。
丁度、トラックとバスが集められている場所──そこに、服を着て武装を持った、新島 健斗の姿が見られる。
「それでは、鳩のふりをして建物の上から……」
「あいちゃん、頼む」
零治は小型モニターのスイッチを切り、大型モニターに移されているリアルタイムの映像へ視線を移す。
あいちゃんが操るダヴ偵察機は、彼らを見下ろせる位置にある三階建ての小さなビルへ機体を着地させ、少し歩いて画角と位置を調節した。
健斗とその部下の不良たち、そして暴走族・頭蛮王(ヘッドバンキング)は、比較的大きめの車を集めている。
「よーし、いいぞ。結構集まったじゃねーかよォ!」
「健斗さん、こんなに十トン(大型トラック)やバス集めて何するんですか?」
「俺らが占領してる所の外へ出る! そっからは人狩りだぜ」
「カモとかシカみたいに撃つんですかぁ?」
「いや、人質にする為にとっ捕まえるんだよ。ホセが言うには、幼稚園とか小学生のガキどもが狙い目とよ。あと、女!」
その瞬間、主として暴走族たちの側から、大きな黄色い歓声が上がる。
「ヒャッハー! 待ちきれないぜ、女を好き放題できるとよ!」
「お前、昨日何人か "食った" だろーが。どんだけヤリチンなんじゃい!」
「テメーも、人妻捕まえて散々マワしてたろーが。どのクチで言っとんじゃー! ぎゃははははは!」
「元気良いじゃねーか。ヤるのもいいが、人質にして身代金もふんだくれるぜ? 最も、メインは金の方なんだがよ……さぁ、行こうぜ!」
彼らは大笑いしながら、それぞれ車やバイクに乗り始めた。
健斗は修理を終えた豪攻車に乗り、鋼鉄の腕にライフルを握らせる。
偵察機越しにそれを聞き、零治は静かに思案する。
今自分たちが動かせる戦力、敵の規模、何よりこれから広範囲に及ぶであろう敵の作戦行動領域……。
嫌でも市街地での戦闘になる、被害を抑える為に使えない武装も出てくる。特に、周りに破片を撒き散らす榴弾は、被害を大きくしてしまう。
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