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7.海田町市街~学舎防衛~
心と隆義は、用事の為に外出した。
二人に、外へ出る事を許可した零治はと言うと──あいちゃんと共に、さらに情報の収集を続けている。
「あいちゃん、様子はどう?」
自衛隊への匿名での連絡を終え、零治がCICに戻って来た時、モニターには広島市の様子が映し出されていた。
海田市にある陸上自衛隊駐屯地には既に、これまで偵察した広島の街の様子と、新島組による破壊活動の様子を収めた動画が送られているが……。
それでも、刻一刻と変わる状況を、伝え続ける必要があった。
「はい。──充電を終えて上がった所、広島湾上を低空飛行する不審なヘリコプターを発見しました」
「どのぐらい前?」
「およそ八分前です」
それを聞いた零治は小型モニターのスイッチを入れ、録画された映像の確認を始める。
防犯システムが流用されたその機材に目的の時間を入力し、その様子を映し出すまで、十秒もかからない。
映像は、鳩に偽装したダヴ偵察機が、バッテリー交換を終えて離陸した直後、広島湾に向けて旋回している様子からだ。
確かに広島湾上に、広島市に向けて急加速するヘリコプターの姿が捉えられている。
「海面ギリギリの高さを飛んでる……?」
「航空法上の安全高度を明らかに下回っています。普通なら高度百五十から三百メートルは取らなければならないんです」
「かなりのスピードを出しているね。見た所、民間機のようだけど……」
「広島市内、西区にヘリポートがあります。新島組の占拠下にあり、恐らくはそこから飛来したものと思われます」
映像はヘリを追うが、偵察機はあくまで鳥に偽装する為、あまり速く飛べない設計になっている。
見る見る内にヘリの姿は遠ざかり、市街地の中央──中区方面を目指して黄金山を迂回してから、姿を見失ったようだ……。
「映像はここまで?」
「はい。機材の性能上、これ以上は追えませんでした……」
さらに、零治はそのまま、広島港を始めとする南区沿岸部の様子を確認する。
あちこちに武装したロボット──豪攻車と、これも武装を施された改造車とバイクが巡回し、スプレーで殴り書きの文字が書かれ、派手な旗を付けたトラックとバスが集まっている様子が見られる。
「あのヘリは間違いなく、彼らの仲間が乗っているようだね……」
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