3.脅迫?!スイートルーム

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その昔。 幼稚園のサオリ先生を好きになった俺は、 素直にソレを口にした。 「サオリ先生をお嫁さんにしたーい」 翌日、サオリ先生は退職しており、 泣きながら家に帰ると、 …そこにいた。 そしてお爺様が言ったのだ。 可愛い可愛い孫を抱き締めながら平然と。 「買って来てやったぞ。 家柄が釣り合わんから、 この女を嫁には出来ん。 だが、煮るなり焼くなり自由にしろ。 多少、法に触れてもワシがなんとかする」 さすがに引いた。 ドン引きだ。 サオリ先生には3日ほど相手をして貰い、 丁重にお帰りいただいたが、 思ったことをウッカリ口にすると、 大変な事態になると悟ったのである。 例え、お爺様が近くにいなくても。 忠実な従者たちが俺の言動を 逐一、見張っていて すべて報告しているのだ。 『…本当に春馬様は見目麗しいですな』 『こんな完璧な顔に生まれたかったよ』 『この遺伝子を後世に残さねば』 誰もが皆、俺を褒め称える。 海運業から始め、運送・製造・金融と 手当たり次第に起業した桜小路家。 地位、名誉、財産。 全てを手に入れた祖父が 唯一、手に入れられなかったもの。 それは『美しい容姿』だった。
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