~リナサイド~

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毎日パソコンに向かって 頭をひねるだけではもう限界。 とにかく自分に 何か刺激を与える必要があると 感じてきた今日この頃。 誰かとの会話でもいいし、 外で季節の匂いを嗅ぐだけでもいい。 なのに、出掛ける理由が私には無く。 そこへ降って湧いたのが、 『書斎を自由に使っていいよ』という カオルからの有り難い申し出。 たまに彼のセフレと 鉢合わせしたりもするけれど、 彼女たちは恐ろしいほど心が広く。 『たまにはそっちの彼氏も貸してね』と 明るくナカダ氏にウインクを投げ、 ヤリ部屋へと消えて行く。 いいなあ、カオル。 実体験を元に執筆出来るんだもん。 でもでも、妄想の世界の方が案外、 現実よりもエロイのかもしれない。 知らないからこそ、 その世界は美しく官能的に見えるのだ。 痛みや嫌悪感も無く、面倒も無い。 抜群のタイミングで 想い人は自分に愛の言葉を囁き、 切なげに求めてくる。 そう、妄想の世界はいつでも優しい。 …それは金曜夜のこと。 私はいつも通りナカダ氏と待ち合わせし、 カオルのマンションへ向かう予定だった。 ほぼ毎日、付き合わせているのに ナカダ氏は文句を言うことも無く。 その献身っぷりはまるで 『私に気が有るんじゃないの?』 などと誤解してしまいそうなほどで。 いつも通りウチの近所の喫茶店に、 約束より30分も早く着いてしまい。
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