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1月の途中だっていうのに、スーパーにはその区画が出現する。
早くない!?
ちょっと、一瞬、息が止まった。今あたしの隣を通り抜けってた親子連れに、変に思われてないよね?こっそり、そうっと、深呼吸。可愛く飾られたその売り場を見ないようにしながら、足早にあたしは牛乳売り場のほうに逃げた。
バレンタインなんて、大嫌い。
そんなイベント、おせっかいすぎるよ。
××××××××
学校帰りの駅。
次の電車まではあと10分。都会だったらもっといっぱい電車が来るのかもしれないな、と思いながら、あたしは冷えきったベンチに腰かける。
「……よう」
ノダ君が、ニコニコ笑いながらあたしのすぐ隣にやって来た。
「今日さー……」
ノダ君が隣に座ったら、他愛もないおしゃべりの時間が始まる。
電車が来るまであと3分。冬のホームは寒いけど、あたし達のおしゃべりは止まらない。電車の中でも盛り上がる。
…………ねぇ、ノダ君。もしも、もしもだよ?
あたしがもしも、勇気を出してバレンタインのあの売り場でチョコを一箱、買ったらさ。
受け取って、くれる?
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