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名前はしらない。
年令はしらない。
職業はしらない。
出身地はしらない。
足のサイズはしらない。
通院履歴はしらない。
特技はしらない。
好きな食べ物はしらない。
好きな男のタイプはしらない。
恋愛の遍歴はしらない。
toeicの点数はしらない。
バイリンガルなのかはしらない。
学歴はしらない。
車の免許があるかないかはしらない。
国家試験をもつかどうかはしらない。
性癖はしらない。
女であることはたしかであった。
*
5時45分、その女はオレンジ色のトップコートをきて駅からでてきた。
2分ほどあるくと、冷凍食品、食パン、たのんでおいたラプサンスーチョンを買い、買いものバグを右手にさげてスーパーマーケットからでてきた。
部屋に入ると居間があかるくなった。
黒いテーブルは細いステンレス製でドイツ製とある。
スリッパをはかないのは、床には暖房がすえつけられているからだ。
土曜の昼過ぎ、検視の結果は裸眼で0.2。
去年よりも0.5悪くなっている。
「・・・これいじょう悪くならないようにする。」
手洗いで鏡をみながら、
「・・・カットしてもらわなくては。」とおもっていた。
その女は、ワンレングスの黒髪をいそがしくなると無造作に髪をゴムで尾っぽのようにむすんだ。
自宅の手洗いの鏡に顔をちかづけて、目を左下におとすと、香水が残り少ないのに気づいた。
瓶のラベルには、jardan de Nileとしるされていた。
服はブランドではなく、デザインを重視という。
靴もブランドには固執しない。ただ、キャンパーの独特のソール感はきにいっている。
去年の暮あたりから、もうそろそろカルティエをてにいれてもいいだろう、と自分ではおもっている。
パソコンは自宅ではマック。
windowsは仕事でしかつかっていない。
家に着くとFMのスイッチをつけ、テレビでは衛星放送のニュース解説。音はほとんどきこえない。
朝はNHKの教育テレビ。
フィンランド製のカーテンは外から内はみにくく内から外はみえるという代物である。
フロアにただひとつだけの棚にミニコンポーネントのオーディオ装置がおいてある。
ジャズCDも増えてきた。
「・・・処分しなくては。」
風呂に入る。
自慰をはじめる。
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