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「だから。さっき俺が言ったのは言葉通りの“月がきれいですね” だと。そういうことです」
「あ、」
「え?」
「あー!」
深夜、お客さんのいない二人きりのコンビニで三十八才の女がいきなり大声をあげたら二十六才の若者はもう狼狽えるしかない。
町田君は隣でいきなり大声をあげた私に恐怖心をあらわにした表情を向け「だ、大丈夫ですか?」と言った。それから「え、なんかすみません」とか謝ってきたのだ。
けれど今私はすぐ隣にいる可哀想な若者のフォローをしてあげる余裕がない。
どんどん顔が赤くなるのが自分でわかる。
“月がきれいですね”
私の誕生日。
月なんか出ていない夜だったのにお隣さんはそう言った。
私は意味が分からず、さりとてそこを真面目に聞き返そうともせず、今思えば最低な交わし方をして終わっていた。
うそ。
うそでしょう?
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