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部屋に乾いたドアの開く音が響く。
いつの間にか驚くこともなくなったその聞き慣れたドアの音は、僕の顔を少しだけほころばせた。
検査結果によっては死ぬかもしれないそんな時に、なぜ僕は笑っているのだろうか?
いや、その疑問の答えは頭の中ではわかっているのかもしれない。
いつもの看護婦さんは僕の隣まで歩いてくると、一緒に主治医の先生の部屋まで来てほしいとお願いしてきた。
どうやら両親もそこで待っているようだ。
断る理由もないのでベッドから立ち上がりスリッパを履くと、彼女に続いてドアへと歩き出した。
「頑張ってね!」
僕が立ったベッドとは別のベッドから、そんな声が聞こえてくる。
「うん!」
僕は声の主の方を振り返り、心配させないようにできる限りの笑顔でそう返事をした。
廊下に出ると、少しひんやりした空気が僕を包み込んだ。
先導してくれている看護婦さんについていくように、先生の部屋へと歩き出す。
先生の部屋が近づくにつれて恐怖心がまた大きくなってきたような気がする。
病人にこんなに長く歩かせているあたりたぶん大丈夫なんだろうと、そう自分に言い聞かせながら看護婦さんの背中をゆっくりと追いかけていった。
しばらく歩くと看護婦さんの足が止まる。
どうやら先生の部屋についたようだ。
看護婦さんは取っ手に手をかけて静かにドアを押し開くと、中に入って僕のためにドアを開けておいてくれている。
僕は看護婦さんに会釈をすると、重い足取りで中に入っていった。
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