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部屋の中では先生と両親が椅子に座って待っていた。
三人ともそれぞれ神妙な面持ちをしていて、部屋の中には緊張感が漂っている。
僕が母親の隣の空いている椅子に座ると、先生はその皺だらけの口を開いて静かに話し始めた。
「本日は神谷魁斗さんの検査結果が出ましたので、それをお伝えすべくご来院頂きました」
自分の心臓がドクンと鳴るのを感じた。
「これがその結果の紙なのですが.....」
僕達の前に数値がたくさん書かれたプリントが差し出される。
「この数値が白血球、赤血球、血小板の数値です」
先生はそう言いながら数値を次々と指差していく。
「それでですね、数値的にはどれも正常です」
一瞬耳を疑う。
「えっ、いま正常っていいましたか?」
おもわず聞き返した。
「はい、どの数値も正常です」
「さらに、白血球の形も正常ですし、がん細胞もなくなってますね」
先生はそう淡々と説明する。
「そ、それってつまりどういうことですか?」
冷静な先生とは対照的に、頭が混乱している僕は『正常』というのがどういう意味なのかわからなくなってしまっていた。
そんな僕を他所に、先生はにこりと微笑むと......
「完治です。おめでとうございます」
と、そう続けた。
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