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目の前の譜面から音符が飛んでいく。
待って、待ってよ!私は必死に追いかける。
指板を抑える左手の小指が、
激しく音を刻み続ける右手の肩が、
もうダメだと悲鳴をあげる。
ヴィオラが壊れるんじゃないか、という程に
私は音を刻む。
でも、音符は私を待ってくれない。
真っ白になった譜面の前で、
私はがっくりと膝をつく。
周りから聴こえるざわめき。
それはやがてブーイングに変わる。
ーお前がいると誰も幸せになれない。
そんなお前の音楽は誰の心に届くんだ?
大嫌いなひとに言われた言葉が何度も頭の中を反芻する。
忘れたくても忘れられない。
私は幸せになっちゃいけないんだ。
その時私はそう知った。
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