預かり物

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ヴァレンタインですから、ちょっと… 2月の初め では、次の打ち合わせは二週後に、 と伝えた言葉に返ってきた応え。 ふと思い出したのは 13年前のチョコレート 春からは受験生になるという 高校2年最期の試験後 あいつと2人、冬の山に日帰りで出かけた。 天気が荒れた何日かのあとに、 抜けるような晴天で、 未だツンとした寒い雪道の 足元をアイゼンで踏みしめたしかめる。 ザクッザクッ、 足音は妙にリズムが揃い 吐く息はあいつも俺も真っ白。 言葉はなくても、 いつも和んだ清々しい気持ちを運んでく。 頂上まで後一息という所で 久しぶりだから。なんか脚が動かない…運動不足…腰にきた 笑いながら話すあいつが 下ろしたザックから出してきたのが、 藍色の包装紙に包まれた板チョコだった。 なんだ?貰い物持ってきたの?誰から?アーと、あれか… 冷やかすと 少し間を置いてから いや、預かりもんだよ、預かったのに、渡すの忘れてた… えっ、誰に。? まぁ当事者いるっぽいし、いいな とひとりごちながら包装紙を開けて、 その視線がハッとして わずかに止まった。 振り切る様に割った板チョコを 差し出し俺に取るように促す。
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