小佐野さんと松戸くん

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気が付くと、また物思いにふけっていた。 そろそろ本屋さんに向かわないと。松戸くんもとっくに教室からいなくなっていた。わたしはカバンを肩にかけると、いそいで教室を後にした。 ◇ 学校から本屋さんまでは、歩いて10分もかからない。クラスメイトに見つかることが心配だったけど、おなじ高校の生徒はあまり見かけなかった。たぶん、部活動をしている子が多いからだろう。 わたしが本屋さんに着いたとき、松戸くんはレジでお金をはらっていた。 「ごめんね、松戸くん。ぼんやりしてたら出るのがおそくなっちゃった」 「あぁ小佐野さん。大丈夫だよ。ちょうど欲しかった本が買えたから」 「それ小説……? 本好きなんだね」 「本はたくさん読むね。映画もよく観る。小佐野さんは本読んだりする?」 「えっと、まんがは読むかなぁ。小説はほとんど読まない。まんがもね、食べもの系ばっかりなんだ。ほら、中年のおじさんが一人でご飯を食べるやつとかあったでしょ? ああいうの」 「じゃあ、小佐野さん自身も食べるの好き?」 「うん、好きだよ。だって、おいしいもの食べるのって、それだけでしあせな気持ちになれるから」 「確かに。それじゃあ今からケーキ食べに行かない?」 「うん、いいよ。このへんにあるの?」 「すぐ近くに良いところがあるんだ」
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