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わたしは席に着いて、自分のカバンの中をたしかめる。
入っているのは全部義理チョコ。一応手作りなんだけど、とかして固めただけのカンタンなやつ。
仲の良い女の子にくばって、それでおしまい。だって、想いをつたえたい彼なんていないんだもん。
たとえば、みんなに人気の陸田くんはカッコイイし、人当たりも良くてステキだと思う。でも、だからと言って本命チョコをあげたいかといえば、そういうふうには見ていない。
わたしはカバンの中から一限目に使う教科書と筆箱をひっぱり出して、まだ来ていないミカをぼーっと待っていた。
他の子達がキャッキャとさわいでいるのを見ていると、なんだか自分がものすごく女子力が低い気がしてくる。
わたしの方は、眠気に負けて机につっ伏してしまっている。机の上にのせた自分の腕に顔をうずめていると、不意にチョンチョンと肩をたたかれた。
「ごめんミカ、寝かけてた……」
ウトウトしていたので、あやうく本当に寝るところだった。
顔を上げると、そこにはミカではなく、なぜか松戸くんが立っている。思ってもみなかった人が立っていたせいで、わたしはポカンとした顔で松戸くんを見つめてしまった。
松戸くんはちょっとだけ照れているみたいだったけど、しばらくしてから決心したのか話し始めた。
「小佐野さん、えっと、突然でびっくりしたと思うんだけど、ちょっとした提案があって。もしよかったらなんだけど、話してもいいかな?」
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