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「えっと、本命チョコあげる予定はないよ」
「よかった! じゃあ話を進めるね」
松戸くんがパッと笑顔になる。
うぅ、なんだろう。なんだかドキドキしてしまう。
「えっと、提案ていうのはね、今日ってほら、バレンタインデーじゃない。それで、クラス中のみんなが朝からソワソワしたり、『何かあるかも』って期待したりしてる。でも、もちろん中にはそういう空気にはちょっと乗れないって人もいるよね」
「それはそうだよ。わたしは乗れない方だもん」
松戸くんはうなずく。
「小佐野さんはそうだと思ったよ。教室に来てからずっと興味なさそうにしてたからね。でも例えば、外から傍観している人だって、何かのキッカケでバレンタインデーの当事者になってしまえば、今日という日が楽しめるかもしれないと思うんだ」
「うーん、そうかもしれないけど……」
考えたこともなかった。いや、考えることを避けてきたのかもしれない。だって、こういうことに期待するのって、すごくエネルギーがいるっていうか。
「で、ここからが提案。今日一日だけ、僕に付き合ってくれないかな。ほら、カップルみたいにさ。バレンタインデーが終わるまでの間だけでいいから。つまり、バレンタインデーってそういう日だと思うんだ。キッカケとして一年の中で一番最適な日」
わたしはまたまたポカンとしてしまった。今日はこれで三回目だ。
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