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「ちょっと待って……。えっと、それ松戸くんはいいかもしれないけどさ……。わたしはこういうのに乗れなくてもべつにだいじょうぶだし……」
うーむ、と言って松戸くんはうで組みをする。だって、わたしには松戸くんと付き合う理由がない。
松戸くんは……どうしてわたしなんだろう?
わたしがあたまを抱えているのをよそに、松戸くんは何やらひらめいたようで、また話の続きをしゃべり始めた。
「じゃあ、ちょっとイメージしてみて。例えば、君がこの話を断ったとする。そして、今日が終わって、バレンタインデーにアクションを起こしたうちの何組かが付き合いだしたとする」
「うん」
「で、君は幸せそうにしているカップルを見て、ちょっと羨ましく思うかもしれない」
「うーん、ちょっとは思うかもしれないけど……」
「その時に後悔するかもしれないよ? 今日のことを振り返って『あぁ私もあの時、誰かと過ごしてたら何かあったのかな』って。『松戸くんの提案に乗っていたら、もっと違ってたかも』って。でも、今の君ならそれを未然に防ぐことができるんだ。それに今日、僕は君を一生懸命楽しませるつもりだよ」
うーん?
言ってることはわからないでもない。そこまで言ってくれるのも、嬉しくないわけでもない。
でも、そんなにカンタンに、この話に乗ってしまっていいのかな。
なんだか上手いこと言いくるめられているような気もする。
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