イヌネコポラリス３【完結】

犬心あれば猫心あり２

【another side】

女流名人戦の時は確かどこかのブランドとタイアップしたとか何とかで、名人側も挑戦者側も着物に袴を着て戦ったのは記憶に新しい。

それに比べれば今回の女流本因坊戦はある意味通常通り、ある意味でそれ程派手なものはなかったが、それでもテレビが入るなんて相当珍しい。

最近ニュースになった影響があるんだろうか。それとも対戦している相手のタイトル獲得が注目されているせいなんだろうか。

「薙虎（ちとら）くん、今どの当たりまで進んでる？白臣（しらおみ）くんの調子はどう？」

「藤堂さんお疲れ様です。今の所蛍（けい）の形がいいと思います」

対戦相手は女流本因坊では三冠中の池田五段。もういい年だしそろそろ世代交代した方がいいんじゃないかと誰かが噂をしていたが、その通りだと思う。

他のタイトル戦や手合いはあまり力を入れていなくて、その本因坊戦にコンディションを合わせてくるとか何だか眉唾物の噂もあるが、確かに気合の入り方は違って見える。ついでに言えば、化粧もかなり厚い。

実力的には去年の段階でタイトルを取っていてもおかしくはなかったが、実力と才能は天も認めるものなのに、身内に不幸が重なったり体調を崩したりするアンラッキー具合でその辺りの調節をしているのか、去年は直前に風邪をひいてそれでも無理して棋譜を並べた結果、肺炎になって入院したため予選すら出ていないというオチがついている。

さすがに馬鹿かと思って罵倒しに入院先の病院へ行ったし、本人も結構しょんぼりしていたから今年は大丈夫だろうと思っていたが、同じことはしなかったようだ。本人は少し満足気にしていたけど、それはプロとして当たり前だからね。