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烏丸七段が言葉に併せて打った一手は確かに少し強引ではあるが、攻撃としてはなかなかいいと思う。
これでそこが荒らされたら地が大きく減らされるし、隣の隅を睨んでの攻防にもなるから、ヨミとしては難しい事を要求される。
今のところ2戦とも蛍が取っているから、この一局で落としてしまっても最悪まだリーチはかかったままだが、精神的なものが勝敗に大きく関わってくる囲碁においては、1局落としたら全部落とす可能性だってゼロじゃない。
しかも相手もなりふり構わず本気になっているようだし、出来れば勢いのまま勝ってしまった方がいいに決まっている。
(僕なら……)
画面越しのあいつが長考に入ったタイミングで、控室にいる僕達も次の一手を考える。
(とりあえず嫌な出方をしている石をオサエ(それ以上進行しないように隣に置く手)かな……)
だけど先まで読んでいくといくつも方法がありそうで、ここでうまく立ち回れれば一気に形成が逆転しそうな予感もする。
(計算していて仕掛けていたらすごいけど、やぶれかぶれだったらがっかりだな)
見た目もややがっかりな池田女流本因坊だし。と、心の中で毒づいていると、同じように次の一手を考えていた人が首をさすりながら石を置く。
「ここは厚み(はっきりとした地を作っているわけではないけれど、盤面の広い範囲に働きそうな石)を出すためにケイマ(自分の石から縦と横に1路と2路(2路と1路)離れた場所に跳ぶ手)が無難なんじゃねぇか」
烏丸七段が言いながら攻防を繰り広げている石を睨んで、予想を立てつつ石を並べていれば、流れを見ていた白臣元名人が「あいつの事だからオサエ(相手の石の進入を防ぐような手)だろ」と反論して、何故かこっちでも火花が散っている。
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