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「蛍、おめでとう」
「キジ、来てたんだ」
それから盛大に行われた祝賀会では、少し前まで画面上に見えていたフリル付きのジャケットを脱ぎ、白いブラウスとネイビーブルーのリボンネクタイに、ハーフパンツ丈のズボンを着たあいつが、少し疲れた様子でこちらに近づいてくる。
「祝賀会、明日がよかった」
「何祝われる張本人がそんな事言ってるの」
「疲れた」
最近少し表情がついてきた分疲れた表情もわかってしまい、確かに連日慣れない大一番をして、さらにその勢いでたくさんの人を招いてこんな事をやっていれば疲れるかもしれない。
さっきの一手がかなり衝撃なものだったとは言え、打った本人はまだ中学生だ。普通の大人でも疲れるのに、ケロッとしていろと言う方が無理な話だろう。
「おめでとー、蛍ちゃん!」
「ありがとうございます。鳩羽三段」
「取りやがったな。まぁ俺も次棋聖取るから俺の方が強いけど」
「……」
鳩羽三段の後ろからにゅっと現れたかと思えば、ぐしゃぐしゃと頭を掻きましてきた烏丸七段の挑発ともとれる一言に反応したあいつが、じっと挑戦的な瞳を相手に向ける。
「そ、そう言えばさ。蛍ちゃん。それ『F&C』のジャケットだよね?」
「何だその料理は」
「もー!違うよ!アメリカの超有名なブランドだってば!」
(フィッシュ……ああそう言えば聞いた事あるな)
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