犬心あれば猫心あり2

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前の名人戦でタイアップを申し出てきたアパレルブランドメーカーも、そんな料理の名前みたいなブランド名だったな。そう思いながらちらりと見れば、さすがそんな事だけ詳しい鳩羽三段の見立て通りだったらしく、こくりとうなずいている。 「いただきもの」 「えー!いいなー!!」 「うるせぇよ。だったらお前も名人戦とかに出ろよ」 痴話喧嘩が始まった2人を無視して、耳元で「そこそこ似合うじゃん」と言えば、特にリボンネクタイが気に入っているのか、手でリボンを弄びながら少し照れくさそうにお礼が返ってくる。 (それ、前じゃ考えられなかったリアクションだよ) 前は似合うとか似合わないとか言っても「そう?」と返ってくるだけでほぼノーリアクション。 それじゃあ折角買ってきたご両親に悪いからやめろと言って、やっと少し言葉を考えていたと言うのに、今見たリアクションはある意味ちょっといいなと思ってしまう。 だけどだからこいつが好きだとかどうこうじゃないけれど。 「フレッドが送ってくれた」 まだ出てないものなんだって。と言っている本人はきっと言われた通りを言っているだけで、意味までは理解していないんだろうな。 鳩羽三段が言うには相当有名なブランドの、まだ未発表の新作なんてちょっとしたニュースになる程の出来事のはずだ。 もしかしたらこいつだけのために作ったオーダーメイドものなのかもしれないが、どちらにしても相当価値があるものをあっさりと着て、しかもあっさりと連戦して本因坊も取るなんて・・・。 「相変わらず人生舐めてる」 「?何が?」 意味が分からないまま首を傾げている姿も、洋服のせいもあっていつもよりあざとく見えるから始末に負えない。
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