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「いいなぁ、あの『フレデリック・ルーバー』と知り合いとか……先生顔広すぎ!」
確かに顔は広い方だと思う。
時折やってくる先生を指名してくる中にはテレビで見たことがあるような人もいるし、海外からの電話を取りつないでみたら、後で有名な人だと知った事も1度や2度ではない。
(でもあれだけ社交的で語学も堪能なら、不自由しなさそう)
ご本人は日本人だけど、小さい頃からアメリカにいたから英語もぺらぺらだし、多分これは私の想像だけど、今までに付き合った彼女から語学も一緒に教えてもらったのか、中国語、フランス語もばっちりだし。
(この前話してた言葉は違ったな……あれはイタリア語……?)
語学をマスターするにはその国の恋人を作るのが一番なのはよく言われる事だが、それも簡単に想像出来る遍歴に、つくづくあんなテレビの世界のような人が間近にいるもんだなと思ってしまう。
「でも先生F&Cの服、着たところ見た事ないですよ」
私が別の事を考えている間に、目の前の箱の中について推測していた子が興奮気味に主張を続けている。どうやら彼女はメンズブランド部門のデザインも知っていると豪語し、先生が今まで着たところを目撃していないと胸を張る。
『知り合いだからとりあえず着るって、先生の性格上あると思うんですけどね』
『どうなのかしらね。案外知り合い以上に親しい間柄とかなのかも』
なるほど。それならちょっと納得が行く。
知り合い程度であれば、社交辞令の一環でもらった洋服を着る事はあると思うし、先生の性格上それは間違いないと思う。
けれど、もしも知り合い以上の、それこそ昔から知っている腐れ縁とかであれば、逆に着るのが何となく恥ずかしくて、プライベートでこっそり着るとかになるかもしれない。
「開けちゃだめよ」
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