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これはサンドイッチとかにすればよかったのだろうか。でもちょうどこの近くのショッピングモールで、期間限定でアメリカからのドーナッツ店が出張でやってきているし、日本の甘さ控えめのものよりもこてこての甘さの方が好きな事務所メンバーにはわりと好評だったんだけどなと思っていると、鼻歌さえ聞こえてきそうな程ご機嫌なマシュマロボディが弾む。
『ありがとう!先生喜んでいたよ』
『ホント!?』
聞けばまず持っていたコーヒーについていたシュガースティックがみんなに好評で残り1つだったんですよ、と言った事に嬉しそうにしていたらしく、さらにお皿の上に乗っていたドーナッツに見覚えがあったようで、しげしげと見ていたかと思えば、店名を言われて嬉しそうに笑っていたらしい。
『先生が向こうで食べていたドーナッツだったみたい。確かに事務所でも時々あそこのお店のドーナッツを差し入れで食べたなぁ』
『そうなの?すごい偶然ね』
『しかもあっちに戻って食べた味と同じものだったみたいで、何だかしみじみしてたよ』
『あはは、先生がしみじみだなんて』
『本当だって。何だか幸せを噛みしめているかのようにしてたよ。ありがとう』
それは少し言い過ぎなような気がしたが、クライアントとの会食以外食生活すら謎な先生がおやつでもちゃんと食べてくれた事がうれしくて、揺れるマシュマロボディを見ながら思わず私もスキップしてしまう。
(あれ?あの子……)
それから定時まできっちり仕事をこなし、今日はこれから買い物するのもアリかなと思いながらロビーを歩いていると、エントランスに飾られている水槽の前には見たことがある制服姿の女の子らしき後ろ姿が見える。
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