Ignition

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「何か問題でも?」 涼しい顔で聞き流し、神長はビールを口にする。 「ない! だって三人で企画から考えて、俺らだけの意見でそのまま形に出来て、しかもそれが仕事だなんてヤバくない? ねえねえ、今からみんなで作ろうよ。まきちゃんさ、仕事帰りだからPC持ってるよね?」 「あ、うん。一応は」 「見積書は帰りまでに作るとして、とりあえず先に細かいところまで詰めていきましょうか。一人既に酔ってるやつがいますが」  この二人と話をしていると、物事が決まるのが本当に早い。どんな場所で何をしていようとも、思い立ったら即、なのだ。考え始めると同時に行動に移していく。そんなフットワークの軽さは仕事にもそのまま反映されている。テーブルにスペースを作って、坂巻はそこにラップトップを置いた。 「今日はさ、やれそうかどうか判断してもらうだけで十分だと思ってた」電源を入れ、立ち上がるのを待つ。 「えー、でもさ、面白そうなことならすぐやってみたくない?」言いながら優月は坂巻の隣に座り直し、横からモニターを覗き込む。一秒も待てないといった、遊びも仕事も隔てのない顔だ。 「どんなに優れた構想も、タイミングを逃せば効果が激減します。まきさんは、そういうのを分かってますし、ここに来ればアイデアをすぐに形に出来ることも知ってる」  意識していなかった部分までずばり言い当てられては、笑うしかない。
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