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そして中央には、生命の樹が特殊な溶液に浸された状態で封入された百五十㎝程の高さの装置。それらが三千体、等間隔で設置されており、その様子はまるで朝露がしたたる青葉の裏に何だか分からない虫の卵を大量に見つけたしまった時のような戦々恐々とした感覚を覚えざる負えない。正直、キモチ悪ィ・・・・。
ともあれ、施設内全体のイメージとしてはメディカル施設というよりは国家規模の研究ラボに近いかもしれない。
ブー、ブー、ブー・・・。
唐突に、施設の南口に設置された転送装置が受信を知らせるブザーを鳴らした。
ブザーは3回繰り返し鳴り、続いて甲高い駆動音と共に装置の天床から床上パネルに向かって、ほんの一瞬だけ磁力を帯びた稲妻を発生させたかと思うと、中央に青白く発光する球体作り出して、人型を形成してゆく。
そして完全に光が消えると、鮮やかな藍色が印象的なメイド服に身を包んだ一人の気弱そうな少女転子が姿を顕にした。
何とも可憐なその容姿に就業中の転子達も思わず手を止めて、息をのむ。
メイド服の少女は転送装置から一歩前に足を止めて周囲を見渡し、目標を定めると、気弱そうな見た目と反比例した自己主張の激しい大きな胸をたわわと揺らしながら、所長室を目指し一気に駆け出す。
実はこのメイド服の少女、韋駄天(足の速い神)の末裔で、とにかく速く走る事に関しては転界随一を誇る。
だがしかし、その能力も建物の中では暴走機関車の如く、迷惑を通り越して凶器でしかない。電動リフトをひっくり返したり、転子達を弾き飛ばしたりと少女の過ぎ去った後は
大惨事である。
少女は周囲を巻き込むたびに、
「はうわわわごめんなさぁぁ~い」
と、甘ったるい間延びした声で叫ぶので、逆にそれが転子達の胸に深いトラウマを刷り込み、彼等の目にはまるでソロモンの七十二魔神の一人、ザガン(雄牛の悪魔)に見えた。
何人もの転子達の屍を越えて、メイド服の少女転子は所長室へ通じる立体階段をパンプスのかかとを鳴らしながら大急ぎで駆け上がり、到着するなり一気に扉を開いた。
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