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ーーーその少し前。所長室では所長の『御使 大地(みつか だいち)』の姿はなく、かわりにその娘である副所長の『御使 翼』(みつか つばさ)が、唸り声をあげて憤怒していた。
その表情はガーゴイルをもっと悪魔的に装飾したような顔面悪魔大戦で、とにかく美の女神ビーナスに匹敵すると言われる絶世の美少女の欠片も読み取れやしない。
翼は『今年度の人間の死亡者数とその内訳』とタイトルの付けられたレポートに目を通し、やり場の無い怒りを覚えて仕方がなかった。と、言うのも前年度に比べて今年度の自殺者数が約1.8倍に増えていること。特に十八歳以下の自殺者が全体の30%をも占めていることに驚嘆を隠せない。
(うーん。脆い、脆すぎるぅるぅ!)
翼はそう呟いてデスクにレポートを叩きつけると、形の良い下唇をきゅっと前に突き出し、可動式の椅子の背もたれを後方へ倒して仏頂面だ。
そもそも人間の魂は転回で生命の樹という形をとり、その命が尽きるまで管理される。したがってその管理者は十分な配慮をもって、出来る限り天寿をまっとうできる様に
務める義務がある。(もちろん死亡後、転生のアフターサービス付きだ)
だがしかし、人間の肉体における全ての現象(病気やケガその他諸々を指す)及び精神状態は、人間個々が自ら管理する必要がある。それは至極当然のことなのだが、
狭い視野と世界感しか持たない未成熟な子供たちにとって、生きる事の意味が希薄になりつつあるのが現状だ。
(それにしても、親やPTAは一体何をやっているのだ!子供たちもどうしてもう少し踏ん張れない!・・・・。)
怒りを込めた流し目の先には、叩きつけたレポートの束。翼にはそのくたびれた紙の端が、自ら自殺という選択肢をとった子供たちのなれの果てに見えて
くやしくて、悲しくてたまらなかった。
(イジメ、親からの虐待、将来への不安、などなど当事者以外にその苦悩は到底理解出来ないだろう。だが、しかぁしぃ!使い捨てカメラ(言ってて古いか)じゃないんだから
ぽんぽんと簡単に命を捨てるなんて愚か者の極だ。物を捨てるのだってお金がかかるし、やれ可燃だ不燃だなんて分別も厳しい。うっかり分別区分間違って捨てた日には中身曝け出されて玄関の前に置き去りにされて、近所の人から後ろ指さされてしまう。)
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