937人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
少し晴れやかな気分になりたくて選んだ
デニムに合わせた桜色のセーターが憂鬱な気分だ。
青い空に似合う桜色のセーターをベージュのコートで包んで隠し、
賑やかな通りを抜け、
ひとがいない道を選んで歩く。
どこをどう歩いたのかわからない。
静かな住宅街の坂をムキになって息を弾ませ、
登りきったところに
大きな桜の木が枝を広げて
美しく咲き誇っていた。
「大きな桜。」
ポツンと呟いて、桜を見上げる。
風に吹かれて桜の花びらがヒラヒラと舞う。
綺麗ね。
誰が見ているわけでもないのに…
最初のコメントを投稿しよう!