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prologue
「かーらーすー、なぜなくのー」
青年は歌う。
白の着流しを纏い、白太刀を肩に担いで。
「からすはやーまーにー」
青年は歩を進める。
影の気配に誘われるように。
「かーわいーい、なーなーつーの」
影は夜になると山から街へ戻ってくる。
黒い人影を模して、闇色の目をぎらつかせて。
「こがいるかーらーよー」
この世に遺した〝かわいいななつのこ〟を探す。
探して、捜して、さ迷う。
「かーわいい、かーわいい、と」
そうして見つけたとき、影は嗤う。
泣いて、鳴いて、言葉なき声を上げながら。
「かーらーすーは、なーくーのー」
青年は歌う。
影の声を抱くために。
「見ーつけた」
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