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納得できない様子のハトと、夜羽の言葉に入り混じっていたいくつかの単語のせいで感動に浸れないトンビとの。それぞれの沈黙が場を静めていた。
しかし先にそれを破ったのはハトの声だ。
「ほーう、なるほどな……んだらば、少しぐらいは見直してやるべ。けどもここで伝えておくぞ、白き鴉浄師。ワシはお前の味方になるか敵になるかわがらん」
「…………は?」
トンビはぽかんと拍子抜けした。
「ワシは各地を巡り巡っていろんな鴉浄師に会って話を聞いできた。そうしてお前の存在を知った。いいが、お前は鴉に狙われでいる。鴉はいつもお前の傍で、お前の命を狙っでる。けども、ワシがお前に手を差し伸べでやるかは、お前次第だべ」
それは突拍子もない話だった。
トンビは開いた口をふさぐのも忘れ、ぽかんとしている。
突如現れた鴉浄師に、なぜ命の心配をされ、敵味方の選択肢を突き付けられているのか。返す言葉も見つけらない。
するとハトはちらりと夜羽を見、笑った。
「まあ、また会うことになるべな。それまでお暇だべ!」
謎を多く残して、小さな鴉浄師は赤月の空に向かって跳躍するなり姿を消してしまった。
再び静寂が三人の間を流れる。なんともいえない気まずい雰囲気が夜の公園内を重くさせる。
ハトの去った空を見上げながら、トンビはこの一時の出来事に唾を吐きたい衝動にかられた。
白太刀は利かない、鴉に力負けする、小生意気な女鴉浄師は現れる、鴉はあっという間に浄翔される、霊力は使えていないだ、鴉に命狙われてるだ、敵味方だの、心に悶々と鬱憤が溜まっていく。
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