2・Reikou

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「あーっ、わっけわかんねえ! なんなんだよ今日は! 赤月のせいか! ちっくしょー次から次って話がややこし過ぎるんだよ!」  ガシガシと頭をかきながら睨み付けた月は、煌々と赤く光り平然と見下ろしてくる。それは血を吸った綿のようで、どこか気持ち悪く思わせた。 「あーあ、たかだか白から赤に変わっただけで、なーんでこんなにも雰囲気変わるんだろうな……」 「あ、あのー……」 「あ?」  不意に入ってきた声に、トンビは目線を落とした。  おどおどと挙動不審な事務員姿の女が突っ立っている。目は左右をさ迷い、こちらを見ようとしない。  ハトがいなくなっただけでこうも態度が変わるのかと、トンビは冷ややかに笑った。 「あ、の……私はその、もう帰っても大丈夫なのでしょうか……鴉はもう、消えましたか?」 「あー、そうだ、忘れてた。あのチビ助のせいで」 「ぽっぽちゃんです!」  キッと女の目がこちらを睨み付けた。  どうやらハトのこととなると強気になるらしい。  トンビは面倒くさそうに息を吐きながら話を続けた。 「その、ぽっぽ、ちゃん……のせいで、声全部聞けなかったんだけどさ。あんた、誰か大事な人亡くしてる?」 「え? あ、はい、今年の」 「ああ、詳しくは話さなくていい。ただ、アンタに憑いていた鴉はその人だと思うよ」 「えっ……」  途端に女の目は揺らぎ始めた。  嬉しいのか、悲しいのか。  大事な人が誰なのか。  トンビにはわからない。けれど、女の反応に確信を持った。
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