2・Reikou

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 霊力が使えなくとも、鴉を浄翔できなくても、声を聞きそびれても、憑かれ者のことは笑顔で送り出せた。と自信に満ちた笑顔で。  しかしそこには──。 「夜羽……?」  静寂だけがあった。  月の赤白い光にぼんやりと浮かび上がる遊具だけがそこに佇み、夜羽の姿はどこにもない。 「あ、あれ……夜羽⁉ おーいっ、夜羽ー!」  呼びかけてみるも返事はない。  もしかしたら腹を下したのかもしれない、と隅にあるトイレを覗いてみるが、やはり静けさだけがあった。 「なんだよ、どこに行ったんだ?」  もう一度辺りに視線を配った、そのとき。  遠くにただならぬ気配を感じた。  ぞわり、と背筋を撫で付けるような、暗く冷たい感覚。 「これって、鴉、だよな……」  トンビはごくりと息を呑んだ。  ひしひしと感じる気配は一つだけではなかった。二つ、三つ、四つ……無数の気配が波のように押し寄せる。 「な、なんだ? こんな……こんな一気に感じるなんて初めてだ!」  咄嗟に公園を飛び出そうとしたところで、トンビは僅かな躊躇いを抱いた。夜羽の姿を捜して、もう一度公園に振り返る。しかしそこにはやはり、暗い静寂だけがあった。
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